428 〜封鎖された渋谷で〜 レビュー

428 〜封鎖された渋谷で〜
発売元 セガオフィシャルサイト
発売日 2008/12/04
価格 7,140(税込)
レーティング C / 15才以上対象(CERO について)
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タギングトップ3
タイトル概要 サウンドノベル / 1人用
クラコン 対応


オリジナリティ グラフィックス 音楽 熱中度 満足感 快適さ 難易度
4pt 4pt 4pt 3pt 5pt 4pt 2pt
総合点
80pt

GOOD!

・独自のアイディア。実質的前作にあたる「街」は、独立して進行する各主人公の物語がときどき交錯し、意外な形で影響を与えあうという作品だった。「428」ではそれとやや異なり、一見まったく無関係と思える主人公たちが、実はみな一つの大事件の渦中にあって……という内容になっている。前作と単純に同じことを繰り返さず、新しい趣向に挑んだ点を評価したい。

・ストーリーの面白さ。序盤はややスロースターター気味ながら、コミカルな描写が効果的で飽きるということがない。その後、事件の全体像が見え始めてからは一気にシリアス展開へ移行。特筆すべきはラスト2時間で、誇張抜きで良質のサスペンス映画を思わせるほどの緊張感に満ちている。

・登場人物。主人公たちは全員個性的で、中には少しとっつきづらそうな人物もいるが、やがては彼らにも相応の魅力があることが明らかになってくる。主人公のたどる運命に一喜一憂できるのも、好感の持てる人物造形あればこそだ。また、主役・脇役問わず年配の男性キャラクターがそれぞれ陰影に富んだ描かれ方をしていて、ストーリーに重みを与えているのも印象的だった。

・入念なストーリー構築。非常にスケールの大きな物語でありながら、物語全体の整合性にも十分に配慮されている(もちろんフィクションである以上、「それはちょっと無理がないか?」という部分もあるのだが)。また、意外な展開につながる伏線も随所に張られており、読み直してみて感心した。

・ルールの明確さ。本編中では「ある主人公の行動が別の主人公に影響を与え、その結果バッドエンドになる(もしくはストーリーが先に進む)」という構図が徹底されていて分かりやすい。その上「主人公同士で干渉するのは、同じタイムエリアの間のみ」という制限も明示されているから、フラグを探して延々と試行錯誤を繰り返す必要がない(ただし、エンディングについて悪い所も参照)。

・ボーナスシナリオ。本編との関わりを意識しつつ、各シナリオ独自の世界を展開していて楽しめた。特にボーナスシナリオ2については、どんな突拍子もないストーリーが繰り広げられるか戦々恐々としていたら、意外にも穏当かつまとまりのよい内容に仕上がっていて、気が抜けるやら感心するやら。ボーナスシナリオ1も含めて、作家の持ち味発揮という面ではやや抑え気味だったが、好き勝手やった結果エログロスプラッタ祭りと化した「かまいたちの夜2」のことを思えば、これで正解だろう。

・グラフィック。静止画は非常に豊富な枚数が用意されており、俳優の演技も臨場感がある。動画は重要なシーンで効果的に使われているだけでなく、タイムエリアクリアごとに流れる「予告」もよくできているから、ついつい先が知りたくなってゲームを続けてしまう。また細かいことになるが、ストーリー進行に伴う外見の変化まで主人公選択画面に反映されているのは面白かった。

・音楽。通常のBGMは、一般的なゲーム音楽と比べると脇役に徹している感があるものの、盛り上げるべき場面ではきっちり盛り上げてくれる。ボーナスシナリオの曲も、それぞれに個性が出ていて印象的。また主題歌については、ちゃんと本作の世界観を踏まえた歌詞になっていて、エンディングで流れるのを聞いていると、とても感慨深かった。

・操作性。Wiiリモコン縦持ちの片手操作が、意外なほどサウンドノベルというジャンルにマッチしていて驚かされた。プレイに必要な機能を適切に各ボタンに割り振っており、この上なく快適。下手にポインタなどを使っていないのもよい。タイムチャートでは、選択肢やJUMPの存在がアイコンで示されており、さらに当該地点から直接ゲームを再開できるのもありがたかった。バッドエンド回避・収集の手間が大きく軽減されている。

・ロード時間にストレスを感じることはまったくなかった。またオートセーブ機能をオンにしておくと、意識しなくても適切なタイミングでセーブしてくれるため有用。

・チュートリアル。冒頭では、ゲーム進行についてゼロから手取り足取り懇切丁寧な説明がなされ、適切なところで「あとは自力でどうぞ」と放り出される(もちろん最初からオフにもできる)。この周到な配慮は、他のゲームも見習ってほしいくらい。

・「街」をはじめとする過去作品への言及や、ネットスラングなどの扱い。分かる人は思わずニヤリとしてしまうし、知らない人はそのまま流しても問題もないという、さりげない使い方でよかった。

BAD/REQUEST

※クリア後要素の少なさ。ボーナスシナリオはせいぜい中編、隠し要素であるスペシャルエピソードなどに至っては、数こそ多いものの個々の長さは掌編や短編程度しかない。また、それらのシナリオは選択肢なしの一本道で、メインのシナリオと完全に独立しているのも物足りない。内容的にはそれぞれ気が利いていて悪くないのだが。できればクリア後に、本編の流れとはやや距離を置きながら並走して干渉しあう、「街」の「青ムシ抄」のような(作風ではなく位置づけの面で)ストーリーが出現するとよかった。

・隠し要素発見の難しさ。中古対策のつもりかとにかく分かりづらくなっていて、自力で発見しようとすれば偏執的なプレイが不可欠。そのような苦労を強いられるわりに、上記のとおり、出現する隠し要素の内容自体は大したものではない。よほどこだわりがない限り、素直に攻略情報に頼った方がよいだろう。私もそうした。

・エンディング分岐の難しさ。この部分では、本編中のバッドエンドのように主人公の具体的な行動によって結末が左右されるわけではないため、それまでとは勝手が違って戸惑うこと必至。もちろんヒントもない。ボーナスシナリオ出現の条件でもあるのだし、ストーリーの中でもう少し手がかりを与えて、達成しやすくすべきではなかったか。

※ストーリーの収束。ラスト付近になると、主人公同士が緊密に連絡を取り合って事件解決に挑むという、よくある複数視点型アドベンチャーゲームと化してしまう。もちろん、この構成なくして終盤のサスペンスはありえなかったわけだけれど、意外な人物の行動が窮地の突破につながるというような形で、序盤の雰囲気も残してほしかった気がする。

・主題歌とそのアーティストが作中に実名で登場し、主人公の1人は彼女のファンという設定なのだが、異様なまでに美辞麗句を並べて太鼓持ちに徹しているため、なんだか気持ち悪い。せっかくの素晴らしい曲が、これではひいきの引き倒しではないか。

・快適さの面では、ゲーム中の動画がスキップできないこと、テキストログからの再読が特定地点からしかできないこと、主人公選択画面からバッドエンドリストが開けないことが不満だった。

COMMENT

個人的に思い入れの深いゲーム「街」の実質的後継作。そのため発表の時から注目してはいたものの、近年のチュンソフト製サウンドノベルがややパッとしなかったこともあり、正直なところ「街」の単なる縮小再生産、劣化コピーに終わってしまうのでは、との懸念が捨てきれないでいた。

そんな中で発売された「428」は予想に反し、当初の不安を一掃してあまりある力作だった。基本的には「街」のコンセプトを継承する一方、新たな試みも果敢に盛り込んで独自の世界を作り上げており、プレイアビリティへの配慮やチュートリアルといった細かい部分にもぬかりがない。私はスタッフの意気込みに脱帽しつつ、己の不明を恥じるほかなかった。

ということで、サウンドノベルファンは何を措いてもプレイすべき作品。そうでない方も一見の価値はあるから、公式サイト等の紹介映像を見て、興味を持ったらぜひ手に取ってみてほしい。Wiiリモコンとサウンドノベルの相性は抜群なのだし、今後もチュンソフトが、あるいは他のメーカーが新作を発売してくれれば、と願っているのだが……。

余談として、悪い所で「※」を付した項目について。プレイされた方はお気づきかと思うが、実はこれらの問題点を解決する要素が、ゲーム中にはしっかりと用意されている。TIPの中でのみ語られる「○○○」の物語のことだ。これが「もう1人の主人公」としてシナリオ化されていれば、本作はさらに完璧なゲームに仕上がっていたのではないだろうか。

Wiiリモコン(縦持ち)使用

プレイ時間:20時間以上30時間未満(クリア済)
TextAdventureFreakさん [2008/12/26 掲載]

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スコアボード

428 〜封鎖された渋谷で〜評価ランク
中央値
83
難易度
2.04
レビュー数
80






サイト情報

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